長野自動車道で茅野市付近を走行中、ふいに思い出した「高過庵
(たかすぎあん)」。
建築家・建築史家・藤森 照信氏設計による高さ10m、ツリーハウスの
茶室で、このまちの郊外にあると聞く。

以前、「リゾート物件情報」のブックレビューで紹介した「田舎の日曜日
―ツリーハウスという夢」は、著者の詩人・佐々木 幹朗氏がこの庵を
訪ねて大いにインスパイアされ、北軽井沢の山小屋の庭に仲間たちと
ユニークなツリーハウスを完成させる苦楽ないまぜの記録だった。

詩人を駆り立てたツリーハウスの先輩、どんなところに、どんなふうに
建っているのだろう。ぜひ、拝見したい。
宵闇が迫り、終点まであと200kmも残っているのに、諏訪インターを
下りてしまった。


こんなとき、スマートフォンは便利だ。ひとさまのブログから、庵は「神長官
守矢資料館」(中世から諏訪神社上社の神官の一つ・神長官を明治年間
まで勤めた守矢一族に伝わる文書を保管・展示)にほどちかい場所に
あることがわかった。
館は前出の藤森氏の建築家としての初仕事でもある。

無事、資料館の入口に到着。あいにく館は閉まっていたが、見越しの
松(?)の、来訪者に歓迎のポーズをとるかのような枝ぶりが印象的。
null

館の向こうを見渡すと、山ぎわに目標物、発見。飄々と宙に浮いている。

胸が高鳴り、桑畑の中の農道をずんずん登る私。


遠くばかり見て歩いたので、その手前に別の建築物が現れたときは
ビックリ。支柱に巻かれた雨仕舞いの銅板がリッチ…後で調べると、
こちらも茶室で「空飛ぶ泥船」だそうだ。泥船…。


とうとう、庵のたもとたどり着いた。梯子で登る茶室だ。

暮れなずむまちを見おろす高過庵。


隣接して、祠(左)と古い墓地があった。祠の周囲にあるのは御柱。
null
車を停めた場所に戻る途中、振り返ると、ふたつの茶室は呼応するか
のように建っている。


舗装路に出てから見つけた庵への案内看板。

正規のルートがあったのに、看板を無視して畑の畦道を
どしどし踏み荒らしてしまった・・・ゴメンンサイーー;

日本の最寒エリアの一つといわれる諏訪。川は凍りついていた。


庵は、米国のタイム誌が選んだ「世界の危険な建造物トップ10」
(第1位はイタリアの「ピサの斜塔」)において中国の縣空寺を
10位に押しのけ、堂々8位にランキングされているそうだ。


諏訪は、藤森氏の出身地。前出の資料館は風土になじみ、板張りの
外壁、鉄平石で葺かれた屋根などに手仕事の温かみを感じさせながら
モダンなたたずまいで、こちらにも魅かれた。
遅くたどりついたことを後悔。今度はあかるいうちに来よう。